試合を見ているだけの人には見えていないだろう。プレーヤーにはゴール以外にも守らなくてはならないものがある。ボール際の削りあいはサッカーならでは。危険なファールから大切な脚を守ってくれるアイテムがある。忘れると試合には出られませんよ――。
■牛木さんのご鞭撻
「すね当ては着けさせなくていいんですか？」
１９９０年夏、私は日本サッカーリーグ（ＪＳＬ）イヤーブックの編集をしていた。
「記録をしっかり残しておかないと、散逸してわからなくなります」という牛木素吉郎さんの提案で１９６６年度版から始まった「ＪＳＬ年鑑」は、１９８８年版まで小さなＡ５判で出版され続け、２３巻に達していた。しかし当時リーグの副総務主事だった木之本興三さんの「もっと華やかで、売れるものにしたい」という意向を受け、カメラマンの山添敏央さんが「年鑑」に代わる「イヤーブック」を企画して１９８９／９０シーズン版から大量にカラーページを入れたＡ４判のものとした。その編集を、私が担当していたのだ。
もっとも、後に、牛木さんには大いに怒られた。「記録として残すには、形も変えてはならないんだ。本棚に並べたときに、形が変わっていたら並べにくいし、同じものには見えないだろう？ せっかく長年やってきたものを、きみが台無しにしてしまった」。牛木さんはいつも厳しい。
