ディエゴ・マラドーナの工夫

 しばらくしてストッキングが伸縮性のあるナイロンの織物に変わり、それに合わせるようにプラスティックの内側にウレタンのような素材を貼りつけてストッキングの内側にさしこむ形のすね当てが開発された。いまでも、多く選手がこのタイプのすね当てを使っている。

 だが、ポジションによっては、さらに進化したすね当てが愛用されている。通常のすね当ての下部に柔らかな素材でくるぶしまで保護する部分を加えたもので、試合中にタックルを多用するディフェンダーたちには心強い味方だ。

 慢性的な足首の痛みと戦っていたディエゴ・マラドーナは、しっかりとしたすね当てをつけるだけでなく、足首の周りには保護のパッドを入れ、それを白い粘着テープで固く巻き絞めていた。1980年代にメキシコ代表とレアル・マドリードで活躍したウーゴ・サンチェスは、すねだけでなく、アキレス腱のところにも小さな「すね当て」を入れてプレーしていた。後ろからアキレス腱をける選手が多かったのだろう。

 着用を義務付けられているだけでなく、サッカー選手には安心してプレーできる心強い防具であるすね当て。だがひとつ大きな悩みがある。しっかり洗わないと、いやしっかり洗っても「臭い」のである。すねに接するのはウレタン製のクッション。しかし普通の人は考えたこともないだろうが、すねも汗をかくのである。ウレタン製のクッション自体には通気性はないから、多少の「通気孔」を設けてあっても、少し使うと汗でぬるぬるになる。使用後はしっかりと洗わなければならない。洗い忘れてバッグに入れたままだと悲惨なことになる。

 同じ「着用を義務付けられた用具」であっても、サッカーシューズは派手なデザインやカラーで彩られ、ピッチ上で「女王」の座を競うように存在を主張し合う。単価も高く、メーカーは新製品の開発に心血を注いでいる。だがすね当ては、試合中には見えないところにしまいこまれるせいか、メーカーもあまり力を入れていないようで、数十年間ほとんど進化が見られない。汗がどんどん蒸発し、いつも肌触りがさらさらと快適なすね当てを、誰か開発してくれないだろうか。

PHOTO GALLERY 選手が変われば足元も変わる
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