■ピッチの上の落とし物
1988年までのルールには、「公式決定事項」としてこんな文言がある。
「競技規則は靴をはくことを強制していない。しかし競技会において、他のすべての競技者が靴をはいているにもかかわらず、1人ないし数人の競技者が靴をはいていないときは、主審はこれを許すべきではない」
またまた脱線してしまった。なにはともあれ、1990年に至って、選手が身につけなければならない「5種の神器」ならぬ「5種の用具」が定着したのである。試合前、選手たちは用具チェックを受けるが、指輪やネックレスをしていないことを示すと、前かがみになって両手でポンポンとすね当てを叩き、「きちんと着けていますよ」と示すのが常となっている。
「基本的用具」のひとつとして着用を義務づけられたすね当てが試合中に取れてしまったら、どうなるのか。Jリーグでも、ごくたまに、激しいぶつかり合いの結果すね当てが外れ、選手は次のプレーのために走り去ってしまって、広大な緑のピッチの中央に片方のすね当てだけが残されているというシュールな絵を見ることがある。たとえば、その選手がそのままゴール前に走り込み、得点を決めてしまったら、得点は認められるのか。