この年、川崎は初タイトルを獲得する。34試合で21勝9分4敗とし、勝ち点72。それまでJ1で3度も2位に達しながら掴むことができなかったJ1リーグ戦を制したのだ。優勝を決めた試合が終了した瞬間、芝に突っ伏して号泣した14番の姿が、それまでの苦しみを表していた。

 中村が引退する2020年シーズンは、それからまだ4年目のことである。中村がプレーした18年間のうち、実に14年間がタイトルを渇望した期間だった。最後の4シーズンで手にしたリーグ優勝は3回。説明するまでもないが、そのどれもが、中村と鬼木監督のコンビによって手にしたものだ。

 監督・選手コンビで戦う2人のリーグ戦は12月19日に柏で幕を閉じる、はずだった。この日、スタジアムに向かう途中にのぞいたスターティングメンバーの中に、その名前はなかった。リーグ戦は、等々力競技場での試合で最後と決めていたのかもしれない。

 川崎にとっては2020年の最後のリーグ戦が、バンディエラがいなくなる最初のリーグ戦になった。白星街道を突っ走ってきたチームだが、いつも以上に、負けるわけにはいかなくなった。

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