しかし、サッカーの神様はこの日、等々力にいた。77分に途中出場し、301日ぶりにリーグ戦のピッチに立った。そして、85分にはゴールまで決めてしまう。ドラマのような展開で、まさに千両役者だった。試合終了のホイッスルを聞くと、中村は腰を折って自身の膝をねぎらった。これは、復帰に当たって持っていた不安の裏返しであったかもしれない。
「お久しブリーフ!」
これは、試合後に放った第一声だ。301日間の苦労をみじんも感じさせない、いや、あえて隠した”役者”だからこそのセリフだ。
ただし、こうも吐露した。
「やっぱり一人じゃここまでやって来れなかったなっていうのは、この10か月強く感じました」
折れそうなときに支えてくれた人たちに感謝した。