真瀬拓海

 第9節の神戸戦で初スタメンを飾ると、酒井高徳アンドレス・イニエスタとボールを奪い合った。

 この試合を撮影していて、サガン鳥栖の松岡大起が出て来た時のことを思い出した。

 昨年の神戸戦でデビューした松岡は、いきなり堂々とイニエスタとボールを争い、チームを勢いづかせた。その試合の取材目的はダビド・ビジャであり、実際にJリーグ初ゴールを記録してくれた。ビジャとフェルナンド・トーレス、イニエスタとトーレス、という絡みもあったし、ルーカス・ポドルスキも含めた神戸の豪華スター3人の揃い踏みも撮影できたのだが、試合後に印象に残っていたのは松岡だった。

 ポジションや年齢、プレースタイルも違っているが、真瀬も臆することなくどんどん自分の良さを出してプレーしていた。フェルマーレンを振り切ってペナルティエリアに侵入した場面もあった。ルーキーが躍動すれば、周りの選手の士気も上がる。活きの良さ、というだけではなく、閉塞感が漂っていたチームにとって、精神面でも貴重な推進力になっていた。そしてやはり、その日の試合後に最も印象に残っていた。松岡を連想したのはそういう理由だった。

 本来はサイドバックの選手だが、仙台ではウイングでも起用されている。前線からのプレスや攻撃センスを期待されてのものであるし、サイドバックよりもタスクが少ないので使いやすかったというのもあるだろう。来年は本職でレギュラーを狙う。

 チームが調子を大きく落とす中で、真瀬も次第に大人しくなってしまった。秋からは阪南大の選手として、再開した関西学生サッカーリーグに出場したことで仙台の試合にはなかなか参加できなかったが、来季は再び存在感を見せつけたい。

 今振り返ってみれば、仙台の2人はチャンスを得たタイミングが早すぎた。結果が思うようについてこない中で抜擢されたのではなく、期待に応えるプレーを見せはしたが、勝てない試合が少し続くと立て直しのために元々いた選手と入れ替わることになってしまった。しかし、その後の結果はご存じの通り、ピッチ外での様々な出来事もあり、17試合勝利なしというどん底状態に突入してしまった。その最中に起用されることもあったが、その時には自分の良さを出すことは難しい状況で、結果を出すことは出来なかった。来季は再び競争からのスタートになるが、厳しい戦いの中で存在感を見せつけ、明るい話題に飢えているサポーターの希望となりたい。

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