J1昇格争い“強豪の意地”(1)磐田・遠藤保仁と初出場21歳CBが灯した奇跡への光【戸塚啓J2のミカタ】の画像
遠藤保仁(ジュビロ磐田)  写真:新井賢一/アフロ
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■遠藤加入の磐田が首位・福岡を撃破‼

 アビスパ福岡の不敗記録が止まった。

 ジュビロ磐田が止めた。

 11月最初のゲームとなった1日の第30節で、最も注目を集めたのは磐田対福岡だった。

 遠藤保仁の加入後は3勝2分と負けなしの磐田に対して、首位の福岡は9月2日から15戦不敗である。どちらも状態はいいが、立場はまったく異なる。この試合を含めて残り13試合で、両チームの勝点差は18だ。J1昇格の可能性をつなぎ止めたい磐田には、引分けさえ許されない一戦である。

 ところが、ホームチームは試合開始早々にしてアクシデントに襲われる。3バック中央の大武峻が、右ひざを痛めて負傷交代してしまうのだ。

 磐田はCBのケガ人が多い。鈴木政一監督の就任後は先発に定着してきた今野泰幸が、29節から戦線離脱している。その29節に先発した大井健太郎は、この試合はメンバー外だった。

 ベンチ入りメンバーのCBは、中川創ひとりだけだった。

 18年に柏レイソルの下部組織からトップ昇格した彼は、プロ3年目の21歳である。若年層の日本代表に選ばれてきたが、18年はJ1で1試合、19年はJ2で1試合の出場に止まり、19年途中にはJ3のSC相模原に育成型期限付き移籍をしていた。

 磐田には今シーズンから完全移籍で加入していたものの、前節まで1度もメンバー入りしていない。移籍後初めてベンチ入りを果たした選手を、首位チームとの試合で開始早々に送り込むことになったのだから、磐田はいきなり危機に直面したと言ってもいい。

 中川本人も「急であまり準備していなかった」と言う。しかし、「チャンスが来たことに対しての準備はできていたので、いつもどおり試合に入れました」とも話す。そのまま3バックの中央に入った背番号22は、どちらかと言えば押し込まれる展開のなかでスムーズにプレーしていく。

 35分には攻撃面で長所を生かす。直接FKの流れから相手ゴール前にとどまっていたなかで、左サイドの遠藤のクロスをヘディングで合わせた。184センチの高さが発揮された。

 41分には先制点を決めてみせた。右サイドからのFKを遠藤がゴール前へ供給すると、ファーサイドで跳躍力を存分に生かす。エミル・サロモンソンに完璧に競り勝ったヘディングシュートが、ゴールネットに勢いよく突き刺さった。

「ヤットさん(遠藤)がいいボールを上げてくれたので、僕は飛んで、いいイメージで決めるだけでした」

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