■決めるべき男・小川航基が6試合ぶりのゴール

 後半開始直後の50分には、追加点が生まれる。小川航基が6試合ぶりにネットを揺らしたのだ。

 左サイドから持ち込む大森晃太郎のドリブルに合わせて、小川はゴール前で動き出していた。このアクションではパスを受けられなかったものの、松本昌也がボールを収めた瞬間に動きなおし、ペナルティエリア内右でラストパスを引き出す。右足を迷いなく振り抜く。シュートブロックのためにスライディングする相手に当たったボールが、ゴール左に吸い込まれた。

「あまりシュートを打てていないなかで、チャンスが来たら五分五分でも振っていこうと決めていました。自分の得意な形でもありますし、振ることで相手に当たりましたけど、そういうシュートはよくあると思うので、いいシーンだったかなと思います」

 この試合初めてのシュートが、自身今シーズン9点目となった。後半の立ち上がりにピンチを迎えていただけに、試合の流れを押し戻す貴重な追加点である。

 ここから先は緊張感がさらに高まっていく。81分に遠野大弥にゴールを喫し、スコアは2対1になる。終盤は福岡に何度もCKを与え、後半アディショナルタイムには相手のパワープレーにもさらされたが、磐田は逃げ切った。

 試合後の鈴木監督は、「こういうゲームになってくると、ヒーローみたいなのが随時出てきてくれるとありがたいな、という気がします」と話した。福岡の不敗記録こそ止めたものの、いまだ勝点15の開きがある。福岡と同勝点で首位に立った徳島とも勝点15差だ。「こういうゲーム」とは勝利がマストだった今日のようなゲームであり、J1昇格圏内へ食らいついていくためにも、中川のような存在がこれからも出てきてほしい、ということだ。

「1戦、1戦、内容のある勝利を勝ち取っていけば、いいところにつながるのではないかな、という気がします」とも指揮官は語る。中2日で迎える次節は、徳島とのアウェイゲームだ。鈴木監督が言う「いいところ」へ辿り着くためには、徳島からも勝点3を奪わなければならない。

PHOTO GALLERY 全ての写真を見る
  1. 1
  2. 2
  3. 3