■日本人らしい守備の文化とは? ベガルタ仙台の組織的でバランスのとれた積極的守備。中盤がしっかりフィルターをかける横浜FC
横浜FMのような超攻撃型のチームが覇権を握ったことによって、それに対抗するためにさまざまな守備の工夫がなされ、今シーズンは横浜FMを苦しめている。
とくに、ベガルタ仙台や横浜FCといった中堅どころのチームが非常に組織的な守備を構築していることに注目したい。引いて守るのではなく、組織的な守備で高い位置からプレッシャーをかけていく積極的な守備だ。両チームとも選手層がそれほど厚くないので過密日程の中で上位に食い込むのが難しいだろうし、高い位置からチャレンジするだけに時に大敗を喫することもあろう。だが、両者とも上位チームを手こずらせることはできる。上位を食うことによって優勝争いに大きな影響を与えるかもしれない。
両チームに共通しているのは、守備の局面でけっして組織を崩さないことだ。相手ボールを前線から追いかけて高い位置で奪おうとして複数の選手が過剰にボールに集中してしまうと、ピッチ上のどこかに大きなスペースができてしまう。あるいは、ようやくボールを奪い返した時には組織が崩れてしまっていて、すぐにカウンターに転じられなくなってしまう。
かつて、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「奪ったボールをすぐにトップの選手につける」戦いを目指した。ショートカウンターで強豪を倒そうとしたのだ。だが、当時の日本代表には守備の組織が作られていなかった。どのようにして、どの位置でボールを奪うのかという戦術=約束事がなく、ただ全員でボールを追いかけることになってしまった。それによってせっかくボールを奪った瞬間にはチームの組織がバラバラになっていて前線の選手が孤立してしまった。
その点で、仙台や横浜FCはボールを追う選手は徹底して間合いを詰めていくが、他の選手はオリジナル・ポジションを保って攻撃に転じた瞬間に備えている。バランスや選手同士の距離を保つことによって、奪った瞬間にショートカウンターを発動できるのだ。