■ もはや境界線はない。欧州とアフリカの「同一化」

 ルカ・ジダンが所属するアルジェリアはラウンド32ではスイスと対戦した。そして、試合開始から優勢に試合を進めていたのはアルジェリアだった。

 だが、前半10分にはスイスのヨハン・マンザンビにドリブル突破を許し、マンザンビからのクロスをブレール・エンボロに決められてしまう。さらに、後半開始直後にはダン・エンドイェに2点目を奪われてアルジェリアは敗れてしまった。

 そのマンザンビはスイス生まれでアンゴラにルーツを持ち、ゴールを決めたエンボロはカメルーン生まれの選手。そして、追加点を決めたエンドイェはセネガル人の父とスイス人の母の間に生まれた選手だった。

 つまり、皮肉なことに、アフリカ勢の一角アルジェリア代表を倒したスイスで得点に絡んだのは、いずれもアフリカにルーツを持つ選手たちだったのである。

 そして、ルカ・ジダンがアルジェリア代表を選択したように、たとえば先制ゴールを決めたエンボロがカメルーン代表でプレーしていてもまったくおかしくはないのだ。

 つまり、2026年のワールドカップでアフリカ勢の躍進をもたらしたのは、ヨーロッパ諸国で育った選手たちだったのだ。

 従って、現在のアフリカ勢は1990年代のナイジェリア代表やカメルーン代表のように粗削りでもなければ、反則を多発することもなく、ヨーロッパ諸国と同じように戦術的レベルも高い。

 アフリカにルーツを持ち、ヨーロッパ諸国で生まれ、ヨーロッパのクラブの育成組織で育った選手たちのうち、ある者は育ったヨーロッパの代表を選択し、また、ある者は父母の出身国のユニフォームを着てプレーする。その結果、ヨーロッパのチームにはアフリカ系の選手が何人もプレーしており、同時にアフリカのチームの選手の大半はヨーロッパの生まれ……。そんな時代が到来したのである。

 サッカーの世界では、ヨーロッパとアフリカはもはやほとんど同一の存在と考えたほうがいいのかもしれない。

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