■駆け引きこそがサッカーの「面白さ」

 2019年にゴールキックのルールが大きく変わった。

 従来は、ゴールキックはペナルティーエリアの外まで蹴らなければならなかったのだが、この年の改正でゴールキックを短く味方につなぐことができるようになった。

 それ以来、ゴールキックからパスをつなぐことが大流行した(している)。GKが周囲の味方DFにつなぐこともあれば、DFが蹴ってGKにつなぐこともある。

 それに対して、相手チームも2人のFWで、あるいは1人のFWとMFの1人によって相手をはめにいくことが定石のようになった。

 だが、曺貴栽監督はそこを狙いどころだと感じたわけだ。

 もちろん、後ろからパスをつないで相手の守備をはがしていくことには価値がある(だからこそ、どこのチームもつなごうとしている)。

 だが、相手に狙われたら大きな危険もはらんでいることを忘れてはいけない。そこでパスをカットされたら、一気に相手のシュートチャンスにつながってしまう。

 つなぐべきか、大きく蹴り出すべきか……。味方のパス能力や相手の狙いなどを総合的に判断して決定していかなければならないことだ。

 中盤でのパスのつなぎもそうだ。横につなぐのか、縦に差し込むのか。味方と相手の状況とか、ピッチのコンディション、試合の流れなどを考えながら一つひとつのプレーを選択しなければならないのだ。

 そして、そういう駆け引きにこそ、サッカーというゲームの面白さが詰まっているのである。

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