■育成期に「教えられていない」キック

「トーキック」は不思議な技術である。

 サッカーのキックにはいくつもの種類があるが、アクロバチックあるいはトリッキーなキックを除けば、インサイドキック、インステップキック、インフロントキック、アウトサイドキックなどに分類されている。なかでも正確なパスができるインサイドキックと、強いボールを蹴ることができるインステップキックは「2大花形キック」といってよい。

 とりわけインサイドキックは、現代のサッカーではプレーの90%以上がこのキックで行われると言われており、育成期だけでなく、プロレベルになっても必ず毎日の練習のなかに採り入れられる重要なキックだ。強く正確なインサイドキックと、キックと同じ足の部位を使ってのボールコントロールは、現代サッカーの最も重要な技術と言っても過言ではない。

 だが「トーキック」は? 私の知る限り、この技術が育成期に組織的に教えられているとは思えない。まったく軽視されているのである。

 目の前に落ちているボールを蹴れと言われたら、初心者は必ずこのキックをする。だが、少しでもサッカーのトレーニングを受けた人なら、インサイドやインステップ、あるいはインフロントで蹴るだろう。どこに飛んでいくかわからない「トーキック」は、「邪道」とさえ思われているフシがあるのである。

(2)へ続く
  1. 1
  2. 2
  3. 3