■古典的なプレーメーカーがもたらした「リズム」
川崎がここにきて、本来の攻撃力を取り戻したのは、大島僚太の復帰によるところが大きい。
大島にボールが入れば、奪われることはほとんどない。大島と、ポジションを自由に変えてプレーする家長が組んだら簡単にはボールを奪えない。大島自身がボールを持ってゲームを落ち着かせ、そして、周囲がきちんとした位置取りを取ったところで、タイミングを見てボールを動かしてスイッチを入れるのだ。
大島が欠場中は、中盤でボールを落ち着かせることができなかった。橘田健人も脇坂泰斗もテクニックのある素晴らしいMFだし、今シーズンは遠野大弥も進境著しい。だが、ボールの動きを止めて落ち着かせるようなプレーはなかなかできないようだ。
その点、大島が入ることで、強かった頃の川崎と同じように緩急のリズムが取り戻せた。
そして、もちろん大島の戦術眼とテクニックによって、一発のパスでチャンスが生まれることもある。第26節のFC東京戦での先制ゴールの場面では、大島からマルシーニョの足元に、浮き球で、しかもコントロールしやすい素晴らしいパスが通った。そして、マルシーニョのクロスを山田がヘディングで決めたのだ。
こうしたリズムの変化の中でプレーすることによって、橘田や脇坂のテクニックもさらに活用できるようになる。
大島僚太という、今は希少な、古典的なプレーメーカーの存在が、川崎復活の鍵となる。横浜FM戦での大島は、マルシーニョが走った後の左サイドで守備の仕事もこなしていたが、大島にはもっと余裕を持たせるべきかもしれない。
その他、1トップを任されることが多い山田が、そのフィジカル的な強さを生かして前線でボールを収めたり、自らゴールを狙ったりと大きく成長を続けてもいる。“川崎らしさ”を完全に取り戻す姿を早く見たいものである。