■脇坂泰斗の試合後の思い

 最終的には10分を超えたアディショナルタイムを含めた残り時間を、一丸になって防いだ末に、7試合ぶりの勝利を告げる中村太主審の笛が鳴り響いた。

 その間にはペナルティーエリア内に侵入したFW小屋松知哉が切り返した際に、対応したMF橘田健人の右手にボールが当たる場面も訪れている。VARの介入をへてOFRの末に判定が変更され、柏にPKが与えられた。脇坂が言う。

「PKになったものはもうしょうがないので、あとはソンリョンさんを信じていこうと。ただ、ソンリョンさんがPKを止めても、その後にこぼれ球をゴールされたらどうしようもないので、それだけをみんなに声がけしていました」

 試合が終わった直後のひとコマ。PKを止めた守護神チョン・ソンリョンに真っ先に駆け寄っていった橘田は、安堵した表情で「ありがとう」と感謝している。

 敵地のゴール裏を埋めたファン・サポーターを含めて、川崎に関わるすべての人々の思いを結集させてもぎ取った勝利に、脇坂はこんな言葉を残している。

「うーん、ここからだな、という思いが一番強かったですね」

 下位のアルビレックス新潟湘南ベルマーレ、そして京都サンガF.C.もすべて勝った。順位も14位のまま、下位チームとの勝ち点差も変わらない。それでもようやく悪い流れを断ち切った川崎は中断期間でさらにチームを再整備し、ホームにヴィッセル神戸を迎える8月7日の中断明け初戦で今シーズン初の連勝を目指す。

(取材・文/藤江直人)

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4