横浜F・マリノスの優勝を下支えした「不安感のない」プレー【「ゴールキーパー」から「ゴールプレーヤー」の時代へ】(3)の画像
現在は鳥栖でプレーする朴一圭 撮影:原壮史

 サッカーは時代とともに進化していく。近年の大きな変化はGKのプレーだ。「ゴールキーパー」ではなく「ゴールプレーヤー」と呼ぶべきだと主張する声も上がるポジションについて、サッカージャーナリスト・大住良之が深掘りする。

■日本への浸透

 イビチャ・オシムは、日本代表監督として最初にそうしたGK活用の考えをもった人だった。2006年、彼は20歳の西川周作大分トリニータでプロになって2年目だった)を代表に招集した。その理由は、「足元のプレーに長けているから」だった。当時の日本代表の主力GKは31歳の川口能活(オシム時代の20試合中19試合に先発出場)だったが、オシムは2010年ワールドカップに向けたチームづくりのなかで彼の考えるGKの理想像を明確に描いていたのだ。

 「ビルドアップに加わるGK」は2010年代になると徐々に数を増した。2019年のJリーグ横浜F・マリノスの監督に就任して2年目のアンジェ・ポステコグルーは、3月29日の第5節、ホームでのサガン鳥栖戦からGKに朴一圭(パク・イルギュ)を起用した。

 前年、ポステコグルーは、先鋭な「スイーパー・キーパー」であると同時に「ビルドアップに加わるGK」である飯倉大樹を全34試合にフル出場させた。しかし飯倉はときに大きなミスを犯して失点し、横浜FMは12位に終わっていた。優勝した川崎フロンターレの総得点57にわずかに及ばなかったものの56得点を記録しながら、横浜FMは失点も56と多く、この数字は降格した17位柏レイソル(54失点)、18位V・ファーレン長崎(59失点)とほぼ同じだった。

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