25歳での欧州挑戦というのは、年齢的にかなり遅い方という印象が強い。「日本人を取るなら若ければ若い方がいい」と考える欧州クラブが少なくないからだ。
6月の日本代表2連戦(エルサルバドル・ペルー)に挑む森保ジャパンのメンバーを見ても、18歳でスペインに赴いた久保建英(レアル・ソシエダ)、19歳でオランダ・フローニンゲン入りした堂安律(フライブルク)など10代の移籍が目立つ。鎌田大地(フランクフルト)にしてもサガン鳥栖から最初に渡独したのは20歳の時。彼の場合は年代別代表経験もなければ、地方の中小クラブに在籍していた選手。そういう人材が長谷部誠のいるドイツ1部のビッグクラブに赴くということで、サプライズだったのは確かだろう。
その後は若手のレンタルが増え、さらにはチェイス・アンリ(シュツットガルト)や福田師王(ボルシアMG)のように高校卒業後、Jリーグを経由せずに海外へ行く例まで出てきた。その分、年齢層の高い選手にとっては逆風だ。20代半ばで渡欧したのは、シュミット、遠藤航、伊東純也(スタッド・ランス)、古橋亨梧(セルティック)など限られた面々しかいない。
伊藤にとって追い風だったのは、遠藤と伊東、古橋がそれぞれの環境で活躍し、評価を上げたことがある。
遠藤は25歳だった2018年夏にシントトロイデン(STVV)へ赴き、1年後には当時ドイツ2部のシュツットガルトへ。そこで最初は試合に出られず苦しんだが、途中からチャンスをつかみ、主力に定着。同シーズンに首尾よく1部昇格を果たし、その後は「デュエル王」として一気に存在感を高めていった。シュツットガルトが昨季・今季と2年連続で1部残留を果たしたのも、彼の貢献度によるところが大だろう。
伊東も2019年2月にゲンクへ赴いたのは、間もなく26歳になろうという時。爆発的なスピードと局面打開力、決定力という武器を認められ、すぐさま新天地でレギュラーを確保。19-20シーズンにはUEFAチャンピオンズリーグにも参戦し、高度な経験値を積み重ねた。そして2020年以降は日本代表でもエース級に成長。最初のベルギー行きから3年半が経過した2022年夏にフランス・リーグアンのスタッド・ランスにステップアップした。「コロナがなければもっと早く5大リーグに行っていただろう」と関係者も言うほど、伊東は現地で高評価を得ていた。
そして古橋も今季の傑出したゴール数で強烈なインパクトを残した。セルティックのアンジェ・ポステコグルー監督のトッテナム指揮官就任が決定し、古橋も一緒にプレミア参戦するのではないかという話も出ているほど。つまり「明確な結果さえ残せば、年齢層の高い選手でもステップアップは可能」ということを彼らが実証してくれた。伊藤もSTVVで同じような仕事ぶりを見せれば、早い段階での5大リーグ行きは十分可能なのだ。