サッカーの試合には流れがある。時には、ハーフタイムを挟んでまったく反対の流れになることがある。どうしてそのような「逆転」が起こるのか。サッカージャーナリスト・大住良之が、理由を探る。
■圧倒した前半の広島
「A game of two halves(前半と後半のある競技)」
サッカーについて、イングランドでよく使われるフレーズである。1980年代後半にテレビのコメンテーターが口にしたのが始まりという説もあるが、その起源はどうもはっきりしない。
たとえば前半はアーセナルがトットナムを圧倒し、先制点も奪った。ところが一転、後半はトットナムが攻勢をかけ、逆に試合を支配。アーセナルは必死に守ったが、最後に同点とされて1-1で終わる…。
サッカーには、前半と後半でまったく様相が変わってしまう試合がある。後半の半ば過ぎに選手交代でリスクを冒して攻撃に転じたチームが劣勢をひっくり返すというというならまだ理解できる。しかし選手も代えないのに、後半になるとがらりと戦況が変わり、攻守が逆転してしまうケースが少なくないのだ。
最近私がスタジアムで見たJリーグの試合では、5月20日の「名古屋グランパス×サンフレッチェ広島(豊田スタジアム)」がまさにそうだった。前半は広島が圧倒、37分にはペナルティーエリア右角少し外、30メートルのFKを川村拓夢が直接決めて(低いボールに名古屋のマテウス・カストロと永井謙佑が連続して触れ、GKランゲラックは一歩も動けなかった)先制した。その前に広島は4回の好セーブでランゲラックにゴールを阻まれ、そのうちの1本、川村のシュートがポストを直撃したこともあって、遅すぎるくらいの先制点だった。