■「スクリーン」の活用

 キッカーのアルノルトから見て右に立ったのはFWマクシミリアン・フィリップ。ビーレフェルトの壁の左端に立つMFアルネ・マイアーに背中から寄り掛かるようにブロックした。そして左に立ったMFレナト・シュテフェンは左にターンしながら外に向かって走り、ボールに向かおうとしていたビーレフェルトの選手と斜めから衝突するように当たり、最後は両手で抑えるようにして止めた。止められたのは、このシーズン、オランダのPSVアイントホーフェンから期限付きでビーレフェルトに移籍していた堂安律だった。

 左サイド(ワールドカップのオランダ代表)と右サイド(ボルフスブルク)の違いはあるが、2つのFKは双子のように似ていることがわかるだろう。

 誰が考案したのかはわからない。相手選手をブロックする形から見て、バスケットボールやアメリカンフットボールなど、アメリカ系のスポーツからヒントを得たのではないかと、私は推測している。アメリカ系のスポーツでは、こうしたプレーを「スクリーン」と呼んでいる。それほど、「サッカー」というゲームのイメージを超え、ボルフスブルクの「トリック」は鮮やかだった。

 ちなみに、この当時のボルフルブルクの監督はオリバー・グラスナーである。翌年からアイントラハト・フランクフルトの指揮をとり、鎌田大地を覚醒させて2022年にはUEFAヨーロッパ・リーグを制覇することになる。

PHOTO GALLERY ■【図解】オランダがアルゼンチン相手に決めたトリックFK
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