今年度の天皇杯は、ヴァンフォーレ甲府の優勝で幕を閉じた。来季はJ2クラブでありながら、ACLを戦う。甲府の偉業はけっして偶然ではなく、だからこそフットボールスタジアムが必要である。サッカージャーナリスト・大住良之は、そう訴える。
■今年のサッカー界の最大の驚き
2022年の日本のサッカーを振り返ったとき、最大の驚きは(「ワールドカップ・ベスト8」を除けば)ヴァンフォーレ甲府の第102回天皇杯優勝だっただろう。
「2部リーグチームの天皇杯優勝」は、過去にも例がある。2011年度の第91回大会ではJ2同士のFC東京と京都サンガF.C.が決勝戦を戦い、4-2でFC東京が優勝を果たした。日本サッカーリーグ(JSL)時代には、1981年度の第61回大会で日本鋼管が、そして続く1982年度の第62回大会ではヤマハ発動機(現在のジュビロ磐田)が優勝を飾った。
ただこの3チームは元日開催の天皇杯決勝戦を迎える前にJ2あるいはJSL2部で優勝し、翌シーズンの1部昇格を決めていた。一方今回のヴァンフォーレ甲府はJ2で22クラブ中18位。翌シーズンも2部でプレーするチームの優勝は初めてのこととなった。しかも甲府は、3回戦から決勝戦まで実にJ1勢5クラブを撃破しての優勝だった。
3回戦北海道2-1コンサドーレ札幌、「ラウンド16」3-1サガン鳥栖、準々決勝2-1アビスパ福岡、準決勝1-0鹿島アントラーズ、そして決勝戦1-1(PK戦5-4)サンフレッチェ広島。驚くべき快挙である。