■ACL開催不可能な理由

 この天皇杯優勝によって、甲府は2023-24シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)への出場権も手に入れた。そして、甲府がホームとしている「JITリサイクルインク スタジアム(略称JITス)」、正式名称「山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場」が、ACL開催の基準に達しておらず、甲府はACLの試合を他のスタジアムで開催しなければならないことも、すぐに明らかになった。

 報道には「観客席の椅子に30センチ以上の背もたれが必要」との記事もあったが、正確には、2015年まであった「30センチ以上」という基準は現行の「AFCスタジアム規則(2021年版)」にはない。

「観客席は全員着席するものとする(大住注:立ち見席は認めない)。座席はそれぞれが独立しており、構造物(床など)に固定されているととともに、身体を支えるための背もたれがある、快適な形状のものとする」(AFCスタジアム規則2021年版)

「JITス」で大きく問題になるのは「座席それぞれが独立しており」という点ではないかと思われる。単に背もたれがないだけでなく、このスタジアムの観客席の大半はいわゆる「ベンチシート」で、番号が明記されていて席を確認することはできるが、それぞれが独立しているわけではなく、長いベンチが並んでいるだけなのだ。

 1986年に山梨県で開催された第41回国民体育大会(かいじ国体)の開閉会式会場を兼ねた陸上競技場として1985年に完成したこの競技場は、当初はメインスタンド以外は土盛りの芝生席で、照明設備もなかった。

 その12年後、Jリーグ加入を目指すヴァンフォーレ甲府が誕生したことで、Jリーグ基準に合わせ、大規模な改修を行った。1997年に行われたこの改修工事では、バックスタンドの芝生席を解体し、コンクリートづくりのスタンドを設置。照明塔と電光掲示板も設けた。収容数は開場当時の2万人から1万3000人に減ったが、Jリーグの試合に対応できるようになった。

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