■後半3ゴールで試合を引っ繰り返す!
0対2から2対2に追いついたのは、群馬戦が初めてではない。横浜FCとの開幕節も0対2から同点へ持ち込んだが、後半終了直前のPKで敗れた。そこから横浜FCは上昇気流に乗り、大宮は勝ち切れない試合が続くこととなる。
J3降格圏に沈む現状から抜け出すためには、大きなうねりを起こしたい。勝点1では足りない。追いつくだけでなく、勝ち切りたい。
この日の観衆は4761人で、全11カードのなかで2番目に多かった。1000人を切る試合もあったなかで、チームを後押しする熱気が充満している。
68分、大宮を後押しするオレンジ色の熱気がさらに高まる。敵陣中央左寄りのFKを、武田がゴール前へ供給する。空中戦に強い相手CBに制空権を握られたが、ボールはペナルティエリア右へ流れた。フリーの矢島が収め、迷わず右足を振り抜く。クロスを予想した相手GKの逆を突き、強烈な一撃がニアサイドを破った。チームメイトの祝福を受けた矢島はゴール裏へ向かってガッツポーズする。ついに試合を引っ繰り返した。
残り時間は20分以上もある。守備に軸足を移すには、まだ少し早い。霜田監督が、両手を広げて下へ下げる。落ち着け、というシグナルだ。ピッチ上の選手たちも、同じシグナルを出し合う。
78分、ピッチに座り込んだ矢島が交代する。
86分、同じくピッチに座り込んだ菊地もベンチに下がる。誰もが限界までハードワークをして、勝利を手繰り寄せようとしている。
89分、群馬が退場者を出す。大宮は数的優位に立つものの、アディショナルタイムは6分だ。86分からは5バックにして守備に重心を移したものの、GK南が思わず見送ったシュートがあった。11対10にもかかわらず、明らかに押し込まれている。終了のホイッスルが鳴り響くまで、気を抜くことはできない──。