■試合のために来日したが試合に出ることができなかった4人
試合後、選手たちはサポーターにあいさつをしながら勝利をかみしめているように見えた。一方で、出られなかった選手たちもただ喜んでいたわけではない。サポーターへのあいさつも終わって観客が帰る埼玉スタジアムのピッチで、居残りランをする光景が見られたのだ。
その選手は、板倉滉、原口元気、植田直通、室屋成の4人。このオーストラリア戦にベンチ入りした選手は12人いた。そのうち4人が途中出場したので、出られなかった選手は8人いた。居残りダッシュをした4人はいずれも出られなかった「8人」の選手だ。この試合のために来日したものの、試合に深く絡めなかった海外組4人は、じくじたる思いを胸にピッチを走った。
試合後に選手全員でスタジアムを1周してロッカールムに引きあげたあと、板倉ら4人はピッチに戻ってきた。メインスタンドから見て左側に集まると、4人は一斉にピッチを左から右に猛ダッシュし始めた。
そのまま今度はメインスタンドから見て、右から左に猛ダッシュ。そしてまた逆に猛ダッシュ。4人は笑顔を見せたものの、ダッシュを繰り返した。青いユニフォームではなく赤い練習着だったが、埼玉スタジアムのピッチで全力を使った。そのわずか30分前には、試合に出場した選手が勝利のために走った芝の上を、ボールを使わないで素走りしたのだ。