■アディショナル弾で首位・磐田が劇的勝利
優勝を決めたかのような歓喜が、90+7分に爆発した。
10月31日に行なわれたJ2第36節の大宮アルディージャ対ジュビロ磐田の一戦は、1対1のまま後半アディショナルタイムに突入する。磐田はCBの大井健太郎を最前線に上げ、パワープレーを仕掛けていた。
ゴール前に上がったボールに、大井と山田大記が反応する。相手DFとの空中戦に挑み、ボールが山田の足元にこぼれる。背番号10の視野には少なくとも3人の相手選手がいたはずだが、「密集のなかで股を抜いて打てば、GKも反応しづらいかなと」と見通した一撃は、目の前の相手選手の股間を抜いてゴール右へ突き刺さる。
磐田のベンチ前では、スタッフと控え選手が歓喜の輪を作っていた。山田も駆け寄る。その他の選手も。喜びの抱擁というよりも、ぶつかり合いのようだ。タイトルを獲得したかのような爆発的な歓喜が、磐田の選手とスタッフを包み込んでいた。
勝たなければいけない試合だった。
勝点74で首位を走っているものの、前2試合はドローゲームに終わっていた。中3日で迎える37節はアウェイで6位のアルビレックス新潟と対戦し、さらに中3日で開催される38節は2位の京都サンガF.C.との直接対決だ。連戦の“アタマ(初戦)”を取って、勢いをつかむ必要があった。
ベンチには鈴木政一監督の姿がなかった。27日に体調不良を訴え、検査入院をしているためだった。暫定的に指揮を執る服部年宏コーチは、「政一さんのために勝とう」と選手たちを送り出した。決勝弾の山田は、「少しでも良い報告をしたいとみんな思っていたので、それも含めて結果を出せて良かったと思います」と安堵の表情を浮かべたのだった。