■「日本選手の距離感の分断」と「ニュージーランドの潔さ」に苦しめられた
では、日本が苦戦したのはどこに理由があったのか。
今回のポイントは、ニュージーランドによる「日本選手の距離感の分断」だったと思います。
日本がコンパクトな陣形でボールを動かし、流動的にポジションも崩しながら相手を攻略するスタイルなのに対して、ニュージーランドは3・3・2・2(ときに5・3・2)のポジションを守り、陣形を崩さずに戦います。マイボールをつなげるときはつなぐけれど、つなげなければ無理をすることなく2トップに放り込む。
森保監督は林大地と相馬勇紀を先発に戻しました。メキシコ戦で前プレスの良いイメージを残したユニットを選択したのです。ニュージーランドがそこまで技術的に優れていない、という分析もあったかもしれません。また、3バックの相手に対してメキシコ戦のように前からボールを奪いにいき、ショートカウンターで守備陣形が整わないうちにゴールへ、という考えもあったと思います。
ところが、3バックへの守備は徐々にハマらなくなっていきます。
ひとつ目の理由が、プレスの形が定まらなかったことです。メキシコ戦のように林と久保がタテ関係になり、堂安と相馬が左右の選手にプレッシングにいくのか。それとも、相手の3バックを林と久保で見るのかが、時間が経つにつれて曖昧になっていきました。
ふたつ目はニュージーランドの潔さでした。
ニュージーランドは後ろでつなげないと判断したら、ちゅうちょなく前線または対角のサイドへのロングボールを選択して、日本のディフェンスラインを下げ、日本の陣形を間延びさせようとしました。プレスにいく攻撃の選手たちからすると、「前からいっても蹴られる。いったらまたプレスバックをしに戻らなければならない」という思いに駆られても不思議ではありません。試合の序盤はそういったこともあって、メキシコ戦のように「うまく取れた」というシーンは限られ、前線のプレスの迫力が徐々に削がれていきました。
ニュージーランドはプレスを回避するために、蹴ってきたあとも明確な狙いを持っていました。3・3・2・2のシステムで2トップと2シャドーにして、蹴り出したボールを回収しようとしてきたのです。日本の2CBに対して2トップ、ダブルボランチに対して2シャドーと、人数を合わせてきました。
また、林と久保がプレスへいった局面でロングボールを蹴られると、久保が最終ラインへプレスにいっているので、本来彼がマークすべきアンカーの選手が一時的にフリーになります。そのアンカーの選手がロングボールの回収に加勢することで、瞬間的にピッチの中央で4対5の数的不利にされていました。前からいっては蹴られ、広げられ、拾われる。ここの人数合わせには、終始苦労させられていた印象です。