■最も印象に残った選手は「FW林大地」
また、メキシコが退場者を出して11対10になった68分以降は、もっと“渋い”ゲームへ持ち込みたかったところです。南アフリカ戦でも課題としてあげましたが、攻撃時に何回かスピードを上げてボールを失うシーンがあったことも気になりました。
暑さを考えれば少しペースダウンをして、ボールを回し、相手を走らせ、消耗させることも必要だったかなと感じます。よりボールを握り、攻め急がないことを心掛けてゲームコントロールをしても良かったでしょう。とはいえ、実際に3点目が取れれば試合はほぼ決まっていたでしょうし、この議論は決めるかどうかの結果論になるので非常に悩ましいところです。
ゲームコントロールについては、ダブルボランチに求めたかったところでもあります。後半はボールをプレゼントするような場面があり、追いかけるメキシコは前からくるので、相手にチャンスのきっかけを与えるようなことはしたくない。次も中2日でフランスと戦うことを考えても、出来る限り消耗を避けるサッカーをしたかったと思うのです。そういうサッカーができるスコアであり、数的優位にも立っていたわけですから。
そうはいっても、選手たちはピッチ内で相手の圧を受けています。彼らにしか分からない空気感や難しさがあり、3点目を取りにいくべきだったのか、2対0で終わらせるべきだったのかという判断は、前述したように結果論でしかありません。90分のなかで状況は刻々と変わっていき、それだけにサッカーは難しいなと感じつつ、シビアな経験をしながら連勝で勝点6をつかんでいる選手たちに、僕は頼もしさを感じます。
一人ひとりがタスクを遂行して素晴らしい勝利を収めましたが、最も印象に残った選手として林の名前をあげたいと思います。
メキシコ戦の彼は、多くのタスクを果たしていました。攻撃ではゴールを奪いにいくのはもちろん、球際でバチバチ戦いながらボールをキープし、背後へ何回もランニングしていました。
守備ではプレスのスイッチを入れ、2度追いを何回も繰り返し、プレスバックもしていた。一番前の選手があれだけ運動量豊富にアグレッシブに献身的にやってくれたら、後ろはポジティブになれるし、頑張れます。彼が最前線でスイッチを入れることで、みんなのスイッチが入った。林の躍動は、チームの一体感を作ってくれました。これで彼が得点を決めれば文句なしでした。次戦に期待したいと思います。