■チーム全体が「乗る」ような前線からの守備
6分の先制点に続いて、12分にはVARで得たPKを堂安が決めました。
とくに先制点が効きました。
開始早々にピンチがありましたが、その後は攻守にアグレッシブに走る日本にメキシコが面食らったところがあり、そこで先制パンチを見舞うことができました。日本の選手たちは、「今日はこの戦いかたでいけるな」という手ごたえをつかんだことでしょう。
前半は2トップが縦関係になりながら、アンカーを消しつつ積極的に前からプレスにいき、後ろもそれに連動することで中盤へのパスコースを消し、相手センターバックにロングボールを蹴らせ、それを吉田、板倉滉を中心に跳ね返して回収することができていました。南アフリカ戦は基本的に自分たちがボールを握る試合展開だったため、そういった形があまりなかったのですが、この日はチーム全体が「乗る」ような前線からの守備ができていました。自分たちのリズムでボールを奪うことができ、それがいい攻撃につながっていたと思います。
ただ、前半の25分過ぎあたりから、蹴らされていたメキシコがボールの回しかたを変えてきたので、少しずつですが守備がハマらなくなる回数が増えていきました。それに伴って、ペナルティエリアに侵入される回数も増えていきましたが、そのハマらなくなってからの20分強を、失点ゼロで抑えたのはかなり大きかったと思います。ハーフタイムを挟むことで、守備を再確認することができるからです。
実際に、一番取られたくない後半の開始15分までに失点を許さなかったことも大きかったですね。ボールは持たれていても、やられてはいけないところではやらせない、という守備が見られました。ハーフタイムの修正もまた、勝因のひとつにあげられるでしょう。後半の早い時間帯に1点差に詰め寄られていたら、試合の行方は分からなかったと思います。
(構成/戸塚啓)
なかむら・けんご 1980年10月31日東京都生まれ。中央大学を卒業後03年に川崎フロンターレに入団。以来18年間川崎一筋でプレーし「川崎のバンディエラ」の尊称で親しまれ、20年シーズンをもって現役を引退した。17年のリーグ初優勝に始まり、18年、20年に3度のリーグ優勝、さらに19年のJリーグYBCルヴァンカップ、20年の天皇杯優勝とチームとともに、その歴史に名を刻んだ。また8度のベストイレブン、JリーグMVP(16年)にも輝いた。現在は、育成年代への指導や解説活動等を通じて、サッカー界の発展に精力を注いでいる。