■瞬間的にスイッチが切り替わる

 右利きだが、左足のキックもすごいという選手は少なくない。釜本邦茂がその好例だ。右利きで、右45度からのシュートは目をつむっていてもゴールの左隅にたたき込めると豪語していた釜本。しかしその右足が有名になると、DFたちは右足だけを抑えにくるようになった。そこで釜本が取り組んだのが左足のシュートだった。

 右で打つと見せかけて右足インサイドで左にボールを運び、左足を振り抜く。シンプルなプレーだが、釜本の右足へ恐怖が大きければ大きいほど効果があった。そして釜本の左足には、右足にない威力があった。右足では細かなテクニックが使えたが、左足はインステップで正確にボールを叩くことに特化していた。だから右足以上に強烈だったのだ。

 ペレも、幼いころ元プロサッカー選手だった父に「左足もけれるようになれ」と言われ、一生懸命練習した。そして左足でも強烈なシュートが打てるようになった。だがそれは、あくまで「右利き選手の左足キック」である。

 だが、小泉はこうした「両刀づかい」とは根本的に違う。彼は本来右利きとのことだが、サッカーをプレーするなかでは、瞬間的にスイッチが切り替わり、左利きになり、左利きとしか思えないプレーをするのである。現在のJリーグの選手たちの大半は利き足でないほうでも正確なキックができる。しかし小泉のような選手はほとんどいない。

第2回につづく

 

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