Jで最も見るべき選手「浦和の小泉佳穂」(1)サッカーでは稀有な「両利き」の画像
小泉佳穂 浦和レッズ対アビスパ福岡(埼玉スタジアム)2021年6月27日  撮影/中地拓也
その小柄で金髪の選手は、Jリーグでも希有なプレースタイルの持ち主だ。完全な左右両利きなのだ。豊富な運動量でピッチのあちこちに顔を出してボールを受けてはさばき、左右両足から繰り出す長短のパスを自在に操ってチャンスを演出する。小泉佳穂はめざましい活躍によって、2021シーズン躍進を見せる浦和レッズの攻撃サッカーの欠かせない重要なピースとなった。日本代表でその奮闘を見る日もそう遠くはないだろう――。

■必見の「のれんに腕押し」フェイント

 史上最多の20クラブ、全38節の長丁場で行われているJリーグ1部(J1)。その前半戦の最大の驚きは、新任のリカルド・ロドリゲス監督が戦術を浸透させて急速にチーム力を上げた浦和レッズに違いない。そしてその浦和のなかでまたたく間に成長し、いまや完全にチームの中心といえる存在になったMF小泉佳穂は、間違いなく、今季のJリーグで最も「見るべき」プレーヤーのひとりだ。その最大の強みは、サッカーでは希有の存在と言っていい「両利き」であることだ。

 初めて見る人は「左利き」と思うに違いない。彼は左足でボールを止め、右肩を前に出して左足でボールをもって顔を上げ、状況を判断する。相手の寄せを右半身で受け止め、左足を一振して決定的なパスを送る。

 だが次のプレーで、見た人は混乱する。彼は右足でもまったく同じようなプレーをするのだ。スペースを一気に突っ切る高速ドリブル。当たりにくる相手を右足アウトでかわし、次の右足インサイドで相手の背後にはいり込むと、そのまま右足を振り抜いてシュートを放つ。これが同じあの金髪の選手か、完全に右利きのプレーではないか……。

 「両利き」が最も力を発揮するのは、相手の逆をとってボールをキープし、小柄な小泉を体ごと押しつぶそうとする相手の圧力を「のれんに腕押し」のようにさらりとかわして前進するプレーだ。相手が当たりにくる方向に応じて右利きにも左利きにもなれる彼は、最初のコンタクトで優位に立ち、次には相手の動きを利用して自在に逆を取る。それはまるで、柔道の名選手を見るようだ。

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