■背番号1の活躍

 アンドレス・イニエスタやアユブ・マシカ、リンコンといった強力な選手が控えていることも、その姿勢に拍車をかけてしまったのかもしれない。神戸は自らの戦い方を出そうと試みなくなってしまい、前川のロングボールはそれがわかりやすく表れたものだった。 

 酒井以外にもその状況を危惧していた選手はいる。山口蛍は試合後「チーム全員がもう少し勇気を持ってトライしていかないといけない」「びびっていてはうまくいかないのは当然」とコメントしたが、日本代表に選出されるまでに成長を遂げ「プレーの意識は日本代表で変わった」(4月の湘南戦後)とまで言う背番号1は決してそのまま終わろうとはしなかった。

 79分、バックパスを受けた彼が選んだのは、思い切って中央を前へと進むことだった。レオ・セアラを置き去りにし、左に展開しようとしたところまでは素晴らしい判断とプレーだったが、そこでキックミスをしてしまい失点に繋がってしまった。

 結果が手痛いものになってしまったためにエラーの部分だけが大きく目立ってしまうことになったが、これが神戸らしさを取り戻そうとしたプレーだったことは特筆しておきたい。前半に「どうした!」と言われた消極的な姿はそこにはなかった。

PHOTO GALLERY 横浜FM対神戸戦での写真 20210509
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