■いつもとは違ったファールの生かし方

 その後、徐々に川崎がボールを握り始める。三笘薫がドリブルで仕掛け、家長昭博がフィジカルを生かしたキープを見せたほか、クロスを左右から上げるなど、名古屋ゴールを割ろうと多彩な攻めを見せた。しかし、最後の精度を欠いて得点はなかなか奪えない。精度を欠いたのは、名古屋の守備が5日前よりも整理されていたことも大きかった。

 そんな状況を打破したのが、31分のセットプレーだ。左サイドで得たコーナーキックを田中碧が蹴る。田中のボールは大きな弧を描いて、ゴール前に放物線を描く。ゴール前で急激に落ちたボールは、名古屋守備陣の寄せが間に合わないDFジェジエウの頭にピタリと合い、そのままゴールイン。またしても前半のうちにスコアを動かしてみせた。

 川崎は、この試合に挑むにあたってセットプレーでいくつかの形を用意していた。ニアでフリックしたボールをファーで詰める形など、セットプレーの中身自体も想定。さらには、いつもとは違って積極的にセットプレーの機会を生かした。というのも、川崎はペナルティエリア付近で得たファールでも、すぐにボールを動かして試合を開始するのが通常のスタイルだ。一見するとチャンスを無下にしているようにも感じられるが、川崎としてはボールを握る“リズム”を失うことのほうがデメリットだからだ。

 それがこの試合では、そのファールをもらえばしっかりとボールを置いてゴールに迫った。名古屋の堅守を崩すうえで、川崎は自分たちのサッカーをしつつも対応策も用意していたのだ。もらったファールの生かし方に、勝利への執念が隠されていた。

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