②国内リーグの衰退

 15チームを固定することで弱小チームの排除による質の向上を目論むスーパーリーグ側だが、固定は弊害ももたらす。その1つが、国内リーグでの緊張感が失われることだ。

 例えば、プレミアリーグからチャンピオンズリーグに出場するには4位までに入らなければならない。今回名を連ねたのはビッグ6と言われる6チームで、毎年少なくとも2チームはそこから漏れてしまう。だからこそ熾烈な争いが繰り広げられ、トップグループが互いにつぶし合うことで2番手グループにも躍進のチャンスが生まれる。そうやって更に必死さが増し、リーグ全体の魅力が高まっているからこそ、プレミアリーグは資本家の投資対象となって多額の資金が投入されている。

 15チームの椅子が毎年確保されている状況は、その魅力の根幹にある必死な競争という部分を揺るがすものだ。投資対象が魅力を失えば、投資家は当然すぐに引いていく。今や、地元の名士が愛情や地域貢献でオーナーを務めているわけではないクラブの方が多い。数字だけで判断される情けとは無縁の世界だ。外国人がクラブを持つことに対して賛否両論が起こるのもこれが大きな理由だ。

 資金は集まらなくなり、国内リーグ全体が縮小していくことになる。大きくなったものが当たり前となった今、大打撃がヨーロッパの各国リーグで起こる。

 イギリスのボリス・ジョンソン首相が「大きな損害をもたらす」と懸念を示したのもその部分だ。フランスのエマヌエル・マクロン大統領も「スポーツが生み出すメリットを脅かす構想」とした。国内リーグの縮小は、雇用やインフラといった経済面・社会面にも影響を及ぼす。文化として深く根付いているサッカーはただのスポーツではなく文字通り生活の一部となっている。

 UEFAはFA、プレミアリーグ(イングランド)、RFEF、ラ・リーガ(スペイン)、FICG、セリエA(イタリア)と共同で声明を発表し「社会がこれまで以上に連帯を必要としている中で、いくつかのクラブの自己利益で設立されたプロジェクト」と切り捨て、厳しい姿勢で対応することを明確にしている。国内リーグはこれまでのように戦いたい、としているスーパーリーグ側だが、それがこれまでのようにならないことは誰の目にも明らかで、自国、そして自チームのファンまでも怒らせている。

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