■「福岡のサポーターに成長した姿を見せられてよかった」
これは、川崎にとって大きな意味を持つ先制弾となった。福岡は、今年の昇格組ながらここまで健闘。川崎戦の前までの9試合で2勝4分3敗と敗戦率は33%。10日のC大阪戦では前半14分に退場者を出してしまったものの、2-2で引き分けるなど粘り強い戦いを展開している。川崎としては、FC東京戦同様に、早い段階で福岡の“戦意”をくじく必要があった。
そのため、川崎の選手は先制点を喜んだが、当の遠野の顔には笑顔はなかった。試合後に、「複雑というか、こういう古巣戦ということをあまり経験してこなかった」と振り返ったように、プロ選手として育ててくれたチームに対する思いがあったからだ。だからこそ、「福岡のサポーターに対して、自分が成長した姿をサポーターに見せられてよかった」とも語った。
この3月に22歳になったばかりの遠野は、中2日ながら多摩川クラシコに続く先発起用。第2節ベガルタ仙台戦でJ1初ゴールを決めて以降、存在感を増している。当初はウイングでの起用がメインだったものの、前節からインサイドハーフでプレー。大島僚太や旗手怜央が離脱した穴を感じさせない活躍をみせている。
遠野はこの試合で、得点以外にも積極的なプレーを見せた。中盤からドリブルで持ち上がる場面を見せたほか、守備でも奮闘。このまま成長すれば、今まで無縁だった東京五輪メンバーにサプライズ招集される可能性すら秘める。