■彗星のごとくに日本代表に現れた

 田中は1998年9月10日、川崎市の宮前区で生まれた。川崎市といっても工業地帯ではなく、住宅地である。川崎フロンターレのホームスタジアム、等々力競技場から直線距離にして8キロ。そう遠い地区ではない。幼稚園でサッカーを始め、2007年、小学3年生のときにフロンターレの下部組織にはいった。以後ずっとフロンターレ育ちである。

 2017年、18歳でプロ契約を結び、翌2018年、20歳の誕生日を迎えた直後の9月15日にホームのコンサドーレ札幌戦の後半39分から交代出場。アディショナルタイムに知念慶のシュートのリバウンドを拾ってゴールを決めた。20歳のデビューはけっして早いとはいえない。しかしフロンターレは前年に続いてこのシーズンもJリーグ優勝を飾ったひとつの「絶頂期」にあり、戦力が充実していたことを考えれば、仕方がなかったのだろう。

 2019年にはコンスタントに試合に出場するようになり、Jリーグ・ベストヤングプレーヤー賞を受賞する。そしてプロ4年目、フロンターレが圧倒的な強さで優勝を果たした2020年には完全なレギュラーとなり、リーグのベストイレブンにも選ばれた。

 2019年には東京オリンピックを目指すU-22日本代表に選出され、6月フランスで行われたトゥーロン国際大会に出場、イングランド戦のMVPに選ばれるなどの活躍を見せ、大会のベストプレーヤー部門で3位に選出された。そして10月のブラジル遠征では、U-22ブラジル代表を相手にミドルシュートを2本決め、アウェーで3-2の勝利に導く。その年の12月には韓国で行われた東アジアのE-1選手権の日本代表(Jリーグ所属の若手で編成)に選ばれ、香港戦(5-0)と韓国戦(0-1)に出場、「A代表」デビューも果たした。

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