田中碧を見るのなら、いまのうちにスタジアムに足を運んだほうがいい。そう思わせるほど、U-24アルゼンチン戦でのプレーは充実していた。もはやJリーグのレベルではないだろう。中盤に君臨する、優雅で成熟したコンダクターぶりをぜひ、目に焼き付けておかなければ。海外に飛び出して、世界のトップリーグで輝きを放ちはじめる前に。
■前半だけで47本のパスをつないだ
3月29日、北九州スタジアム(ミクニワールドスタジアム北九州)で行われたアルゼンチン戦で見せたU-24日本代表MF田中碧(川崎フロンターレ)のパフォーマンスは衝撃的だった。
0-1ながら内容的には「完敗」だった東京での第1戦(3月26日)から中2日。先発11人中9人を入れ替えて臨んだ試合。前の試合でアルゼンチンに球際の戦いに敗れたことを見てとったこの試合のメンバーは、立ち上がりから激しい闘志で戦いを挑み、第1戦とは逆にアルゼンチンを追い込んだ。
板倉滉(フローニンゲン)と組んでボランチとして出場した田中は、ボールを受けてさばき、ボールを受けてターンし、またボールを受けて相手をブロックしながらキープし、日本の攻撃の起点となった。私が数えたところ、前半45分間での田中のボールタッチ回数は49回。うち1回がヘディング、1回がシュート(公式記録にはカウントされていない)だったが、ヘディングしたボールを含め、47本が味方につながった。パスミスはわずか1本だった。
これだけたくさんボールに関与し、また、確実に味方に渡したことが、日本のリズムにつながった。そして久保建英を中心とした林大地、食野亮太郎、相馬勇紀といった前線の選手たち、さらには右サイドバックの原輝綺(左サイドバックの古賀太陽はあまり攻撃に参加しなかった)が攻撃面でイニシアチブを握ってプレーを進められる要因になった。