■2021年フロンターレの最大の補強

 昨年の川崎は圧倒的な強さで優勝を飾った。34試合で26勝5分3敗で勝点が83。得点が88で失点31。いずれもが、圧倒的な数字だ。得点の多い超攻撃的なチームは、往々にして守備に弱点を抱えるものだが(一昨年の横浜FMのように)、昨年の川崎は失点数でも名古屋に次いで2番目に少なかった。

 そして、迎えたシーズンオフ、川崎の主力級のうちで流出したのはポルトガルのサンタクララに移籍した守田英正だけにとどまった。昨年度の年間最優秀選手賞を獲得した三笘薫や心境著しい田中碧なども海外移籍の可能性があるかと思ったが、いずれも川崎にとどまった。選手のほとんどが残留したことこそが川崎にとって最大の補強だったと言っていい。

 そして、守田が抜けた穴にはジョアン・シミッチが入って卒なくこなしている。また、昨年大活躍した登里享平はケガで長期欠場中で、旗手怜央が左サイドバックで起用されている。旗手は昨年末にサイドバックで初めて起用された当時は戸惑いが見られたが、試合をこなす毎に新しいポジションに慣れて、横浜FMとの開幕戦では一昨年のJリーグMVPの仲川輝人とマッチアップしてもまったく遜色なかったし、今では旗手と三笘の左サイドのドリブラー・コンビは攻撃面での威力を増し、相手にとっての大きな脅威となっている。

 こうして、今シーズンの川崎は昨シーズンより間違いなく強くなっている。

 34歳のベテラン家長昭博もコンディションが良いようで、横浜FMとの開幕戦では2ゴールを叩き込んでいる(38歳の大久保嘉人や37歳の長谷部誠のことを考えれば、まだ老け込む年齢ではないのは当然だが)。

 川崎の右サイドでは、昨年も山根視来が素晴らしいプレーを見せていたが、今シーズンも山根と家長のコンビネーションは冴えわたっている。そして、ここにMFの脇坂泰斗や田中碧が加わって、川崎らしいワンタッチパスをつなぐ攻撃は、相手チームにとっては分かっていても止められないレベルのものになっている。

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