■崩される場面でもなんでもなかった
しかし、そのリードは2分しか持たなかった。U24代表に選ばれた田川亨介が26分、ゴールまで20メートルの位置から豪快なシュートを決めてみせたのだ。試合はたちまちイーブンに。それでも、流れを容易に渡さずに拮抗した展開へと持ち込むことはできた。
だから、両チームが得点をしてからの残りの前半は、決してFC東京のリズムではなかった。しかし、この青赤のチームは良くも悪くもリズムを必要としない。1点目がそうだったように、2点目も個人の力で生み出してしまったのだ。
前半終了間際の43分、ペナルティエリア外でディエゴ・オリヴェイラがトラップと同時のまた抜きプレーでシマオ・マテを一瞬で抜く。仙台としては、崩される場面でもなんでもなかったため、他の選手がこのブラジル人ストライカーに寄せきれていない。
また抜きしたままの前進でいとも簡単にペナルティエリアに侵入すると、慌てる仙台の守備陣をあざ笑うかのように右足でシュートを放つ。名手GKヤクブ・スウォビィクの手先に触れることなく、弧を描いたボールの軌跡はそのまま逆転への軌跡となったのだ。