J2021年のJリーグがいよいよ幕を開ける。本稿では新たなシーズンに挑むJ1各チームの注目選手を2名ずつピックアップ。チームとしてのポイントも紹介する。ニュースターの誕生を期待したい。
◎サガン鳥栖
昨年4月、2019年度の決算報告で20億円もの赤字が明らかになり、ピッチ外が騒がしくなってしまった。債務超過によるクラブライセンス剥奪こそ増資で回避したものの、2020年はコロナ禍による減収で赤字が確実であり、このままでは再び債務超過に陥ることは間違いなかった。
加えて、この時点では3期連続赤字の問題もあった。2018年度と2019年度が赤字で、2020年度の赤字も確実なことで3期連続の赤字によるクラブライセンスの取り消しに引っかかってしまうはずだったが、コロナ禍におけるJリーグの特例措置により赤字がコロナ禍の影響であると認められれば翌年度の決算で判断、つまり2021年度を黒字で終えなければならないとされていた。
クラブはスポンサーの獲得を目指したものの、コロナ禍による影響以外に、竹原社長の不透明な経営方法を懸念されてなかなか上手くいかなかった。これまでも私財を投入していると言われていたが、今回債務超過を回避した増資も、どこから出たお金なのかは明かされなかった。
10月、先のクラブライセンスの特例措置が2021年度末まで継続されることが決まり、さらに2023年度末まで猶予期間が与えられることになった。これによってリーチがかかっていた鳥栖の3期連続赤字は実質ノーカウントになり、2024年度末までに黒字・債務超過の解消を実現できていれば良いことになった。計画的で堅実な経営を実現すれば達成できる可能性は十分あり、ようやく光明が見えてきた。
11月には2020年度の決算が10億円の債務超過になる見通しだということが明らかになったが、一方で木村情報技術株式会社が胸スポンサーになることが発表された。
そして12月19日のシーズン最終戦、良くも悪くも1人でクラブを大きくしてきた竹原稔社長が退任することによって、鳥栖は生まれ変わる第一歩を踏み出すことになった。
このオフは、チアゴ・アウベスはガンバ大阪へ、金崎夢生と森下龍矢は名古屋グランパスへ、原輝騎は清水エスパルス、原川力はセレッソ大阪、高橋秀人は横浜FC、宮大樹と金森健志はアビスパ福岡、など、試合にあまり出ていなくて安いわけではない選手だけでなく、試合に多く出ていても声がかかった選手は積極的に放出することになった。
2011年に竹原社長が就任し、2012年の初昇格からここまで降格することなくJ1で戦ってきた鳥栖は、J1で10年目のシーズンに未来へ向けた新たなスタートを切ることになった。