■注目選手(2) FW:林大地

 ユースがどれだけ強いとしても、ユース出身者だけでJ1を生き抜くことは難しい。そこに良い意味で異物となる選手が入ることが重要だ。自分たちとは違う持ち味でチームを完成させてくれる選手、外からの視点を持ち込んでくれる選手、いわば助っ人のようなその存在があってこそ、ユースの選手同士では出てこない新たな面が引き出され、より高いレベルのサッカーが実現する。

 堅実路線を進もうとしている鳥栖にとって、その役割の選手もまた、補強ではなく自前で用意したい。そうなると、戦力的な部分を考えても大卒の即戦力ルーキーに白羽の矢が立つ。

 幸い、既に人材は確保済みだった。今年から背番号10をつけることになった樋口雄太のようにユースから大学を経由して戻ってきた場合も外からの視点は持っているが、林ほどの異物感、助っ人感は出ない。

 林は大卒ルーキーとしてプレーした昨年、リーグ戦10試合に先発しただけでなく、合計31試合も出場し、フォワード陣で最多の出場時間を得た。ゴールは9つ。チームトップの十分な数字だったが、本人は満足していなかった。今年の目標は15ゴール、エースとしてチームを引っ張るということだ。

 前線を走り回り、相手ディフェンダーを引き摺りながら強引なシュートを放ち、雄叫びを上げる。林はいつの間にかビーストと呼ばれるようになっていた。

 その豪快で一生懸命なプレーを見ていると、先述のユースの話も経営戦略の話も何もかも関係なくなってくる。細かいことは抜きにして、ただ単にそのプレーを見ているだけで十分、そう思えるくらいワクワクさせてくれる選手だ。スタジアムで、その雰囲気の違いを感じてほしい。

FW林大地(サガン鳥栖) 撮影/原壮史

 

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