J2021年のJリーグがいよいよ幕を開ける。本稿では新たなシーズンに挑むJ1各チームの注目選手を2名ずつピックアップ。チームとしてのポイントも紹介する。ニュースターの誕生を期待したい。
◎徳島ヴォルティス
リカルド・ロドリゲス監督が作り上げたチームはついにJ2優勝を果たし、J1の舞台にやってきた。2019年はプレーオフで湘南に敗れ、キャリアハイの成績を記録した野村直輝が大分トリニータへ旅立ったが、選手が入れ替わってもチームのクオリティは落ちなかった。
活躍した選手がすぐJ1に引き抜かれてしまうことや、主力を担っていた期待の若手がローン移籍でやってきた選手で翌年には帰っていってしまうことは、J2では当たり前のことだ。いる選手と育成型期限付き移籍で巡り合った選手によって戦い方を変えるのではなく、長くチームの礎となり得るスタイルを築き上げることは難しいミッションだ。しかし、残った選手も伝え手になることで新しい選手がフィットするまでにかかる時間は何年も短くなり、ロドリゲス監督の戦い方は徳島というクラブの財産になった。
今年はその、クラブに長く受け継がれるスタイルの確立、という部分を浦和レッズに期待されてロドリゲス監督がいなくなってしまったが、徳島は当然戦い方を変えるつもりはなく、継承するためにスペインからダニエル・ポヤトス監督を招聘した。
外国人の新規入国が制限されていることでポヤトス監督が来日できず、開幕戦の指揮を執ることは不可能な状況になってしまった。来日から2週間の隔離期間があることを考えれば、開幕戦だけではなく数試合は指揮官不在の試合が続きそうだ。
しかし、戦い方を変える予定はなかった。ポヤトス監督が間に合わないから、ではなく、そもそも昨年までやってきたことをJ1で体現するつもりだった。
J1に昇格したことで、選手の大半が入れ替わってしまう事態は起こらなかった。チームを象徴し、戦い方を完璧に理解しているキャプテンの岩尾憲がいる。岩尾だけでなく、上福元直人、石井秀典、内田航平、西谷和希、小西雄大、渡井理己ら、中核を担っていた選手たちが今年も揃っている。17得点を挙げた垣田裕暉も、鹿島アントラーズからのローン期限を1年間延長することに成功した。監督がいなくても、これまでやってきたことをJ1で見せつけることができるメンバーは揃っている。
新監督の不在は、ロドリゲス監督が4年をかけて確かなものにした徳島のアイデンティティをさらに強くすることになるだろう。