■柏レイソルへの気分はロンドン

 だが、あるとき、素晴らしい道を見つけたのである。距離は「レイソルロード」と同じ。ほぼ最短距離でスタジアムに着く。その道は、柏駅からスタジアムに向かい、件の「700メートル直線道」のすぐ右裏にある。「レイソルロード」に面した家の裏側の小道なのである。狭いところは幅2メートルほど。ときどき自転車が通るが、車が通っているのに出合ったことはない。心おきなく「スタジアム歩き」を楽しめるのである。

 由来、イギリス人はたくさんのものを発明してきた。サッカーもそのひとつであるが、サッカー以上に偉大で、しかも信じ難いほど世界に知られていないものが「パブリックフットパス」である。林望さんの『ホルムヘッドの謎』という本で、国有地や私有地であっても、法律によって特定の道路に誰でも歩く「通行権」を認めたパブリックフットパスというものが紹介されている。田舎の牧場や農地などはもちろん、ロンドンなどの都市にも、家の裏に小さな道があったりして、誰でも歩いていいことになっている。イギリスを訪れると、私はこうした道を探しては歩き回るのが好きだ。

 柏の「裏道」を発見したとき、私は「パブリックフットパスだ」と思った。「表」の「レイソルロード」に面した家の裏手には、季節ごとの花が咲いており、初夏にねむの木の美しい花を咲かせる家まである。まるで散歩のように楽しむことができるのだ。

 この「柏のパブリックフットパス」は残念ながら道半ば、第三小学校の手前で終わってしまう。しかしそこでいったん「レイソルロード」に出ると、こんどは左にはいり、最初の角を右に曲がる。すると、「レイソルロード」とほぼ同じ幅で、車どおりがほとんどない道が、日立台公園の手前まで続いている。こうして、私は車をほとんど気にすることなく、「柏バカ一代」が集結する聖地にたどりつくのである。

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