■カメラマン氏に「走れメロス」
だが、メディアシャトルは時として大きな悲劇を生む。2010年のワールドカップ南アフリカ大会の開幕戦の日、余裕をもって出たのだが、メディアシャトルが大渋滞に巻き込まれ、オープニングセレモニーどころか、試合のキックオフにも遅れそうになったので、スタジアムの2キロも手前でシャトルを下りて走ったことがある。2人の日本人カメラマンといっしょだったのだが、20キロ以上もある荷物を背負ったカメラマンのひとりは途中で死にそうな表情をして「置いていってくれ」と言うのを、もうひとりのカメラマンと励ましながら走った。
以後、できる限りそうしたものに頼らず、なるべく公共交通機関を使い、最寄り駅から歩いていくことにしている。
Jリーグの試合でも、私はできるだけ歩く。Jリーグが始まったころは最寄り駅からバスやタクシーを使うことが多かった。しかし歩いてみると、時間的にも、シャトルバスやタクシーを使うのとあまり違わず、場合によってはかえって速いのに気づいてから、原則として歩くことにした。
ふだん、私は東京周辺のスタジアムをあちこち回っている。そのなかで最寄り駅から最も遠いのは、平塚の競技場、今季から「レモンガススタジアム平塚」と呼ばれることになった湘南ベルマーレのホームだろうか。このスタジアムの周辺の交通渋滞は有名で、ビジターチームのバスも困ることがあるらしいが、ある日平塚駅からシャトルバスに乗ったら45分もかかってしまった。クラブのガイドには「7分」と書いてある道のりである。