■スポーツの発展はラジオとともに

 ここでクイズ。飛行機の発明とラジオの発明は、どちらが先だったか?

 飛行機の発明者は誰でも知っている。アメリカのライト兄弟、1903年のことである。対するラジオの発明者はカナダ人のレジナルド・フェッテンセンで、1906年のこととされている。しかも実際に「ラジオ放送」が始まるのは1920年代のことである。飛行機よりも新しいテクノロジーであるラジオ。しかしテレビが世界を覆ういまでは、とくに日本では、ラジオはメディアとして過去のもののように思われているのではないだろうか。さらにサッカーとの関係が思い浮かぶ人は多くはないだろう。だがモラレスやマリア・ムニョスの例でもわかるように、世界ではラジオはつい最近までサッカーという文化の中心にあったのだ。

 1920年にアメリカで始まったラジオ放送。日本でも、早くも1925年に放送が始まり、翌1926年にはNHKが誕生している。さらに翌年には現在の甲子園野球の中継が始まり、1932年にはロサンゼルス・オリンピックの放送が水泳チームの快進撃で日本中を熱狂させた。

 そもそもマスメディアは、スポーツと密接な関係にあった。マスメディアと言えばまずは新聞だが、新聞の大衆化は19世紀であり、それは、スポーツの大衆化の時期と一致している。スポーツを報道することで新聞は飛躍的に売り上げを伸ばしたのだ。ただ、新聞にできるのは、試合の告知やプレビュー、そして試合翌日の結果詳報という形しかない。しかしラジオの登場によって、「実況中継」というまったく新しいエンターテインメント、スポーツの楽しみ方が誕生した。スポーツとともにラジオは急速に大きなメディアとなり、スポーツも発展していく。

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