■世界ではマッサージ店から温泉施設まで

 そうしたスタジアムの多目的利用の先鞭をつけたのが、2020年10月に日本代表がカメルーンやコートジボワールと親善試合を行ったオランダ・ユトレヒトにあるスタディイオン・ハルヘンワールトだった。ハルヘンワールトは第2次世界大戦前から存在する古いスタジアムだったが、1982年に全面改築され、その時スタンド下の商業利用を始めたのだ。ハルヘンワールトは収容力約2万3000人とサンガスタジアムとほぼ同規模のスタジアムだが、スタンド下にはいくつものショップが入っている。また、4つのコーナーの後方には太い照明塔の柱が立っているために座席は設置されていないが、その三角形のスペースには独立した低層のビルが建設されて、オフィスとして貸し出されているのだ。

 このハルヘンワールトの経営的な成功を受けて、西ヨーロッパではスタンド下を様々に利用する多目的スタジアムが一気に増えた。

 西ヨーロッパ以外の国々ではスタンド下は古くから商業利用されてきた。

 東ヨーロッパのスタジアムには、スタンド下が商店街のようになっていて庶民的な店で埋まっているところが多い。アジアのスタジアムでも、スタンド下に様々な商店が入っているケースは多い。

 この『サッカー批評Web』で、僕は「蹴球放浪記」という連載も書かせてもらっているが、しばらく前に中国・北京の工人体育場のバックスタンド下にあるビジネスホテル「スポーツイン(工体酒店)」に泊まった話を書いたことがある。

 2002年ワールドカップのために韓国で建設されたスタジアムでも、スタンド下が商業利用されているところが多い。韓国のスタジアムのスタンド下は映画館やウェディングホールからマッサージ店、さらには温泉施設まで実に様々な用途に使われている。

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