■公園法の制約を受けてきた

 ところが、日本ではこれまでスタンド下のスペースはあまり活用されていない。スタジアムの多くが「公園法」という法律に基づいて建設されてきたからだ。

 日本には地方自治体が公園の一部として体育施設を建設すると、国からの補助を受けられるという制度があり、これを利用して多くのスタジアムが建設されてきた。

 しかし、公費による補助を受けて公園の一環として建設されるために、スタジアムの面積や用途などについて細々とした制約を受けるのだ。営利企業であるプロ・サッカークラブだけに都合の良いような設計にすることもできないし、スタンド下を商業利用することもできなかった。

 そのため、日本のスタジアムではスタンド下の商業利用はあまり行われてこなかったのだ。神戸のノエビアスタジアムのスタンド下がレストランやフィットネスセンターなどとして利用されていたり、長居スタジアムのバックスタンド下にユースホステルが入居しているのはむしろ珍しい例だった。

 そういう意味で、僕はサンガスタジアムのスタンド下に「大河ドラマ館」をはじめ、いろいろな店が入っていたことに新しい動きを感じたわけである(「大河ドラマ館」は、当然来年には閉鎖されるが)。

 サンガスタジアムは、駅からあまりに近いので、地元にとっての利益が生じない恐れがある。つまり、亀岡の市街地や亀岡城址などはスタジアムとは反対の駅の南側に存在する。だから、スタジアムを訪れた観客の多くは駅とスタジアムの間を往復するだけで、亀岡市内に足を踏み入れることも、そこでお金を落とすこともないかもしれないのだ。スタジアムが亀岡市民に親しまれ、市民に貢献できるようにするには、やはりスタンド下を有意義に活用するしかない。

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