■「昇格争いの主役になる」

 徳島も福岡も勝利を逃しただけに、長崎の勝点3は貴重だ。首位の徳島に勝点5差、2位の福岡には勝点3差に迫った。

 ジェフユナイテッド千葉とのアウェイゲームは、簡単なものではなかった。尹晶煥監督が率いるチームは、ボールポゼッションを最優先にしない。手倉森誠監督は「千葉は割り切ってボールを持たせてくる。我々がボールを握れそうな展開でも実は守備が大事。ボールの失いかたに気をつけなければならない」と話していたように、ポゼッションで上回るもののシュート数で劣る展開となる。24分にはクレーベに際どいヘディングシュートを、31分にも直接FKから田口泰士に決定的なヘッドを浴びるが、GK徳重健太がセーブする。23節の徳島戦以来の出場となる36歳の守護神が、リズムに乗り切れないチームを支えていく。

 相手守備陣を攻略できなかった長崎だが、後半開始直後の51分にカウンターを発動する。自陣中央からドリブルで持ち込んだ氣田亮真が、浅いDFラインの背後へスルーパスを通す。ダイアゴナルのランニングで、名倉巧がDFラインと入れ替わる。副審の旗は上がらない。オフサイドはない。

 フリーで抜け出した長崎の背番号14は、ペナルティエリア内まで運んで左足を振り抜く。自身シーズン5得点目となる先制点を決めきった。

「亮真くんとはすごくやりやすくて、いいパスをもらえて自分が決められた」

 試合後の名倉は、そういって表情を緩めた。33節の岡山戦では、名倉のパスから背番号18が決めている。23歳の氣田と22歳の名倉のコンビネーションは、今シーズンを戦ってきたなかで磨かれた長崎の武器と言っていいだろう。

 終盤は4-4-2から5-4-1へシステムを変え、長崎は1対0で試合を終わらせた。これで先制した試合は15勝4分の負けなしだ。「アウェイでしたたかに勝った。これからもこういうゲームが必要になるだろう」と話した手倉森監督は、「J1昇格を巡るドラマで、自分たちが主役になる。その気になって戦っていきたい」と力強く語った。

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