「3強+1」の激戦「最後のなでしこリーグ」に見る日本女子のポテンシャル(1)神戸の最前列「日本代表コンビ」の破壊力の画像
競り合う松田紫野(ベレーザ)と田中美南(レオネッサ) 写真:森田直樹/アフロスポーツ

シーズン半ばにしてデッドヒートを繰り広げる、なでしこリーグが面白い。現在おこなわれているシーズンをもって最後となり、来年からはプロリーグの「WEリーグ」が始まる。首位を走る浦和レッズレディースと追いかける日テレ・東京ヴェルディベレーザ、INAC神戸レオネッサの3強が輪郭のはっきりしたサッカーでし烈な争いを繰り広げている。これを追うセレッソ大阪堺レディースをはじめ、虎視眈々と上位をうかがうチームも充実の戦いを見せる。密の少ない環境で開催される「最後のなでしこリーグ」、これを見逃す手はない。

■「パス・サッカーの日テレ・ベレーザ」対「組織的な守備のINAC神戸」

 9月12日、日本女子サッカーリーグ(なでしこリーグ)で2位の日テレ・東京ヴェルディベレーザと、3位でこれを追うINAC神戸レオネッサの上位対決があり、両チームのコンセプトの違いがはっきり分かる大熱戦の末、神戸が勝利した。2位のベレーザが敗れため首位の浦和レッズレディースとの勝点差が5に開いたが、なでしこリーグの上位争いはこれからもますます激化しそうである。

 開幕前から予想された「3強」つまりベレーザ、浦和、そして神戸の3チームのほかに、今シーズン1部に昇格したばかりのセレッソ大阪堺レディースも食い下がっている。それをここでは「3強+1」と呼ぶことにする。

 さて、2、3位対決となったベレーザ対神戸の試合で、ベレーザは見事なパス・サッカーを繰り広げた。全員が足を止めることなく、ボールが動く度に少しずつポジションを修正して複数のパスコースを作りながら、丹念にボールをつないだのだ。

 ポジションも非常に流動的で、トップ下の小林里歌子やボランチの三浦成美は縦横無尽にポジションを移し、左サイドハーフの木下桃香は右サイドにも顔を出して右サイドを活性化。最終ラインで負傷者が続いているため、左サイドバックの位置には本来アタッカーである遠藤純が入っていたが、木下が中に入って開いたスペースには遠藤が積極的に攻め上がる……。

 一方の神戸は組織的な守備でベレーザの攻撃をしっかりと受け止めた。

 DF4人のラインと中盤の4人のラインがそれぞれ距離を保ってゾーンを作って守り、2人のボランチがしっかりとフィルターをかける。ボランチでは杉田妃和が攻撃的、伊藤美紀が守備的といった役割分担もはっきりしており、伊藤は相手のパスコースをしっかりと読みきって頭脳的な守備でチームに貢献した。

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