■ピッチからもっとも近いホテル

 実は、僕が泊まっていたホテルは工人体育場のバックスタンドの中にあったのです。

 海外に観戦旅行に行く時、僕は駅やバス・ターミナルの近所か、スタジアムそばのホテルに泊まります。駅やターミナル周辺には安ホテルや安レストランがたくさんあって便利ですし、荷物を持ってウロウロする必要がありません。スタジアムのそばなら試合後にすぐに部屋に戻れて、とくに夜遅い試合の時には便利です。ミラノのジュゼッペ・メアッツァのメインスタンド前にある「B&Bホテル」などはスタジアムを出て2、3分で部屋に戻れます。

 そういう意味で最高に便利だったのが、北京工人体育場のバックスタンドにある「工体酒店」でした。「工体」というのは工人体育場の略称で、北京の人は周囲の繁華街のことも「工体」と呼んでいます。

 工人体育場は1959年に「中華人民共和国建国10周年」を記念して建設された「北京十大建築」の一つです(「十大建築」には人民大会堂や北京駅なども含まれています)。建設された当時、周囲には低層の集合住宅くらいしかなかったようですが、今では交通にも便利な繁華街になっています。中国政府が各国大使館を体育場そばの「三里屯」という場所に集中させて移転させたため外国人も多く、お洒落なレストランやバーが多い、東京でいえば青山とか六本木的な街になっています。

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