■ホーム&アウェーで戦う理由

 では、なぜ「ホームが有利」なのだろうか。

「ホームアンドアウェー制」はサッカー誕生のころからのものである。

 カップ戦やリーグ戦など、組織的なサッカーがまだ誕生していなかったころ、クラブのマネジャーの仕事は多忙だった。個々のクラブと手紙でやりとりして試合日程を決めなければならなかったからだ。そして1つの試合が決まれば、もう1試合、最初の試合をアウェーでプレーしたクラブのホームで行うのが通例だった。ホームとアウェーでは、試合環境に大きな違いがあったからだ。

 今日でも、ルール上では、ピッチの大きさはタッチラインが90~120メートル、ゴールラインが45~90メートルと大きな許容範囲がある。すなわち、縦が120メートルで幅が45メートルという「廊下」のようなピッチでも公式戦開催は可能ということである(ただし国際試合では、100~110メートル×64~75メートルとされている)。Jリーグは「105×68メートル」ときっちり決めているが、古いスタジアムがベースになっているイングランドではクラブによってピッチの大きさが違うのは当然のことと考えられている。

 ピッチの大きさだけではない。イングランドの田舎で草サッカーに使用されるグラウンドに行くと、明らかに傾斜のついたピッチに遭遇することがある。あるとき私は電車の車窓から異常なピッチを見た。両ゴール間がほとんど「スロープ」で、片側のゴールの根本がもうひとつのゴールのバーの高さほどにあるのだ。それを見て、なぜ試合に前半と後半があるのか、わかったような気がした。どんなに不公平と思えるピッチでも、前後半で入れ替えれば公平になる。サッカーが誕生したころには得点がはいるごとにエンドの入れ替えを行っていたが、それも、サッカーのルールの根本精神のひとつである「公平」の考えに基づくものだった。

 「ホームアンドアウェー」もまったく同じ思想から生まれたものだ。互いのホームで1試合ずつ行うことで、公平な競争ができる。1試合プレーしたら、アウェーチームは「では次はウチでやりましょう」と話をしたに違いない。それほど、「ホーム有利」は厳然としていたのである。

 世界初のサッカーリーグである「フットボールリーグ」(プレミアリーグの前身)」は1888年に始まった。「強いチームをグループにして、全チームが総当たりする形にしたらレベルの高い試合ができるし、観客も集められる」というアイデアは、その10年ほど前に誕生したアメリカの大リーグ・ベースボールからヒントを得たものだったが、初年度から当然のように「ホームアンドアウェー制」が取られたのは、「公平な戦い」を期すサッカーとしてはごく自然なことだった。

後編につづく

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