■ホームゲームに臨む姿勢の問題
最初に考えられるのは、新型コロナウイルスによる「無観客試合」と、それに続く「5000人限定試合」の影響である。無観客ではファンの声援はスピーカーを通じてしか選手に届かず、「5000人限定試合」では、拍手という選手を強く後押しするものはあるものの、声援や歌声はなく、まばらな観客席の前でのプレーとなっている。かつてホームチームを強力に後押ししていたサポーターが不在のなか「ホームの利」がなくなったのだろうか。
リーグ再開の第30節から閉幕の38節まで9節を無観客で開催したプレミアリーグの記録と比較してみる。ホームの勝率は、中断前には約45%、再開後は約46%、「勝ち点率」はともに約53%と、ほとんど変わっていないのである。サポーターがいるかいないかが、ホームの勝率に影響を与えるわけではなさそうだ。
もうひとつ考えられるのが、Jリーグが今季リーグの特別措置として採用した「降格なし」の特別制度である。これまで、アウェーでは1勝ち点でいいと守備を固めてきたチームが、降格の恐れがないことから、ホームと変わらないサッカーでチャレンジする傾向になっているのだろうか。
この仮定を裏付けるのが、ホームチームとアウェーチームとの得失点差だ。「勝ち点率」が50%を超えるリーグはもちろん、50%を切ったブンデスリーガでも、得点数ではホームチームが上回っている。ところが今季のJリーグでは、71試合を消化した時点でホームチームの得点が92、アウェーチームが108,アウェーチームが16も上回っているのだ。
だがどのような理由があったとしても、ホームチームの「勝率」約31%、「勝ち点率」約38%というのは異常な数字である。「5000人限定」といっても、ウイルス感染の懸念があるなかで観戦にきてくれる熱心なファンに、勝つ姿どころか、勝ち点をつかむ姿を見せられないのは、プロとして容認できない問題ではないか。
過密日程の今季、どのチームも多かれ少なかれ「ターンオーバー(選手の入れ替え)」をしているが、ホームやアウェーにかかわらず、試合日程だけで決められているのではないか。「ホームは絶対に勝つ」という決意が希薄なのではないかと思われる例も散見される。ここは原点に戻って、何よりもホームでの戦いを重視するべきだ。