■「世界で通用する選手になりたい」

 投入されたのは63分だった。0対1のスコアで送り出され、70分にFWイウリが2度目の警告で退場となる。

 チームが数的不利に立たされたなかで、79分に歴史的なシーンが生まれる。ボランチの高宇洋からタテパスを引き出し、ワンタッチで落とすことで食いつてきたCBの背中をとる。ペナルティエリア内で高からのリターンパスを受けると、冷静なトラップから右足でゴール右上へ突き刺したのだった。

 山口の霜田正浩監督は、「彼が16歳とは考えていない」と話してきた。この日の試合後も、「しっかりボールが収まるし、身体の使い方も良く、シュートセンスもある。16歳とは思っていないので、間違いなく(0対1から試合を)引っ繰り返してくれると思って入れました。得点を取ってくれで非常に嬉しい」と話している。

 就任3年目の指揮官はまた、「大事にレノファが育てたいという選手です。ただ同時に、将来だけではなく、現在もチームに欠かせない戦力に成長しつつあると思います。今日はそれを証明してくれた」とも語っている。

 河野本人も、Jリーグ初ゴールには喜びを表した。

「あのワンプレーはヤンくん(高宇洋選手)とワンツーで。いいラストパスをくれたので、流し込むだけでした。この3試合ずっと監督が信じて使ってもらえていたので、ゴールという結果を出せたことは嬉しく思います。世界的に見てもこの年齢で活躍している選手がたくさんいますので、世界で通用できる選手になっていきたいと思います」

 試合は1対2で敗れた。それだけに、喜びに浸ることはないのである。

「ゴールを決めて嬉しかったですし、決めるぞという気持ちはありましたが、やはり勝利したかったので、悔しい気持ちがあります」

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5